その他私のホビー
2020年12月 中村 淳 (第24代・昭和56年卒)
[記事番号:c0142]
東北線 水戸線 常磐線 大回りの旅 (資料:無し
)
2018年12月1日,土曜日.この日はRCTC OB/OG会の総会だった.セントポールズ会館での総会は4:40pm頃で終わった.3代上の小野澤さんと,2次会をどうしようか考えていたが,あいにく2人の同期やその間の世代の仲間は誰も参加していなかった.それで,ライオンの隣のダブリナーズ アイリッシュ パブで行われた鈴木宏和さんたちの代の2次会に参加させてもらうことにした.それも7:15pm頃には終わった.本当なら,旧知の友と2次会や3次会で盛り上がるはずだったのだが….そして都合の悪いことに,妻がこの日外出していて,荒川沖の駅に迎えに来れるのは9:30pm頃かその後だという.
それでも,池袋から上野まで来て,6番線ホームで7:40pm発の常磐線勝田行きを待っていた.電車に乗ったら妻に連絡して,もし待たされるようなら荒川沖駅前の居酒屋にでも入ろうかと考えていた.そのとき,反対側の5番線ホームに7:38pm発の東北線小金井行きが入ってきた.扉が開くと,乗客はまばらで,たいていの席には自由に座れそうだった.
2015年から上野東京ラインという路線が新設されて,それまで東北線も常磐線も下りの始発は上野だったのが,東北線はほぼすべての列車が東海道線と直通運転になり,土浦以遠行きの常磐線もほとんどが品川始発になった.常磐線はそれまでは上野で少し待ちさえすれば必ず座れたのが,以後,混雑した車両に乗らなければならなくなった.だから座席のすいている列車はありがたかった.
突然,この小金井行きに乗って小山まで行き,水戸線に乗り換えて友部,そこで常磐線上りに乗り換えて荒川沖に向かうという,大回り鉄道旅が思い浮かんだ.しかし,どのくらい時間がかかるのか,接続がうまくいくのか,さっぱりわからない.あれこれ考えたが,乗ってから時刻を調べよう,無理だったら引き返せばいい,と考えて小金井行きに乗った.すぐに扉が閉まって電車は走り出した.
車中,インターネットで時刻表を調べた.上野7:38pm発小金井行きの電車の時刻は載っていなかった.臨時列車なのだろう.その代わり,7:39pm発宇都宮行きの時刻が載っていた.まあ,大差ないだろう.その後の経路も調べると,以下のようになっていた:
上野19:39 – 20:56小山21:05 – 22:05友部22:10 – 22:44荒川沖
よかった.現実的な時刻に帰れる.しかも小山でも友部でも絶妙な接続のタイミングだ.それでも3時間以上かかるが,このくらいなら許容範囲だ.この2つの接続がうまくいかないと,特に水戸線の運転間隔が長いので,かなり時間がかかることになっただろう.
乗った車両はクロスシート(座席が進行方向前後向きに配置されている)だった.東京近郊区間では近距離列車でもクロスシート車がどんどん減っていて,ロングシート(座席が進行方向左右向きに,窓を背にして配置されている)車がほとんどだ.どちらがいいかは乗車率による.普通列車のクロスシートは大体ボックスシートで,そのピッチが大人の男性には少し狭いので,混雑しているときはあまりうれしくない.しかしすいていれば,足の置き方を気にせずに横を向けば車窓の景色を楽しめる.大学2年の3月に女子班に加わって紀伊半島に行った.そのときは,女子部員と一緒に座ったボックスシートがその狭さゆえにとても幸せな空間に感じられたものだ.
ボックスシートの進行方向左端に座って車窓をながめる.車内がすいていて,目当ての景色がないときはだいたいこの席に座る.右側だと目前に反対方向の線路があって目障りだからだ.といっても夜なので,近くや遠くの街の明かりが後ろに流れていくのを見るくらいだが.この,夜の電車から見る景色,私はけっこう好きだ.夜の景色というのは昼のそれに比べるとディテールがわからず,とても情報量が少ない.その分,想像力がたくましくなる.オフィスで残業している人の仕事は何だろう.居酒屋は賑わっているのかな.あのトラックは何を載せているのかな.
街から郊外に出るとビルより住宅が多くなり,さらにその住宅の数もだんだん減っていく.線路にほぼ並行して伸びる道路を眺めながら,その道を自分がバイクや自転車で走っている気になる.路面がきれいで幅広のスムーズな道が,だんだん細く曲がりくねるようになり,そのうちダートの上り坂になって森の中に消えていくと,それに合わせて想像の自分も車体をあやつって進んでいく.電車と同じスピードで小さなRを超絶操縦で抜けていく.
小山で水戸線友部行きに乗り換える.5両編成のディーゼルだ.ちゃんと確かめたわけではないが,キハ40系か何かだと思う.へえ,今でもまだディーゼルが現役なんだ,と思った.ディーゼル車に乗ると,遠くに旅に出た感覚になって,ちょっとうれしい.このときは特に気にしていなかったが,後日思い出してこれが珍しい体験だったことが分かった.
2005年11月に水戸線を岩瀬から下館まで乗ったことがある.この時の車両は415系だった.415系は私が学生時代によく乗った中央線新宿発長野行き441Mの115系とそっくりの交直両用だ(私はこの115系が大好きで,今も現役で走っているしなの鉄道に近々乗りに行こうと思っている).つまり水戸線はとっくに電化されていたのだ.調べてみると,この年は基本的にE501系かE531系が使われていた.この日ディーゼル車が走ったのは車両移送か何かの特別な事情があったのだろう.
また進行方向左端に座る.しばらく市街地を走るが,ほどなく住宅もまばらになり,ローカル線の風情になる.小山で乗ったときは1両に20人くらい乗っていたはずなのに,気がつくと5–6人しかいない.羽黒駅付近などは,東京近郊区間ではなくまるで飯田線に乗っているような錯覚を起こさせる.日中なら右の窓からおそらく加波山が見えるはずだが,今は真っ暗だ.街の喧騒はなく,たまに通過する踏切の警報音がドップラー効果で2–3度音程を下げるのを聞くと,何かわびしい気持ちになる.
ついでの話だが,ドップラー効果は列車の速度が速いほどその音程が離れる.たかだか100km/h程度の在来線にくらべて300km/hの新幹線だと約6度になる.聞いてみたいと思うが新幹線には踏切はない.理論上,列車が音速の1/3(約408km/h)で走ると踏切の通過前後で警報音は1オクターブ下がる.リニア新幹線にも踏切はないだろうが.
友部から常磐線に乗ると,さすがに乗客も増えて,街に戻ってきたことを感じる.車両も通勤型のロングシートでちょっと残念な気分だ.とはいえ,高浜などは駅ホームから西側にスケールの大きな田園風景が広がる,私の好きな駅だ(東側は視界が悪く霞ヶ浦は見えない.もちろん夜は真っ暗なだけだ).荒川沖で降りて,迎えに来てくれた妻に何食わぬ顔で礼を言って助手席に乗る.私の楽しくもしんみりした大回りの旅は終わった.
この大回りの旅では,途中で検札などを受けていない.荒川沖駅で私のSuicaから引き落とされたのは通常の池袋–荒川沖間運賃の¥1,144.だ.これはもしかして不正乗車なのか? そんなことはない.JRのルールに則った正しい金額なのだ.東京近郊区間内を一筆書きで乗ると,発駅と着駅の間の最短ルートで計算した運賃を払えばよいことになっている.
今はコロナ禍でなかなか鉄道旅ができないので,かわりに時刻表を眺めて妄想鉄道旅に出かける.その時刻表はJTBが出している復刻版時刻表1968年10月号だ.ワイド周遊券で寝台特急と連絡線を乗り継いで北海道を回ろうかな.それとも….
オーディオセットとカセットテープ |
コメント
2020年12月 中村 淳 (第24代・昭和56年卒)
[コメント番号:m0301]
小野澤さんの送ってくれた画像(オーディオセットとカセットテープ)を本文に添付しました.
あれから2年経ちましたね.今年はコロナの影響で開催されませんが,総会を毎年楽しみにしています.よく言われることですが,年齢と共に時間の進みがどんどん速くなるように感じます.
小野澤さん,音楽と酒の話,好きですよね.私もですが.それにしても,物持ちがいいんですね.音楽がスマホやコンピューターで自由に聴けるようになって,カセットテープとそのための製品は市場から駆逐されてしまいましたね.’70–’80年代,立派なオーディオ セットは20代の憧れでしたから,今とはずいぶんちがいますね.いずれオーディオについての話も何か投稿したいと思います.音楽ですが,私は洋楽をメインに聴いていたのであまり波長の合う話はできませんが,森田童子というと私はThe Whoの映画Tommyのポスターを思い出してしまいます.
2020年12月 小野澤 睦 (第21代・昭和53年卒)
[コメント番号:m0300]
総会の後、あのアイリッシュパブに行ったのはもう2年前ですか!?
今ちょうど夕食を終えてひと風呂浴びてステレオのスイッチをONにしたところで、何を聴こうか?と思ったところでした。カセットデッキの横に忘れていた40ん年前にエアチェックしたカセットテープを見つけ、それこそん10年ぶりで再生しながら中村さんの投稿を読んでいました。吉田美奈子の「夢で会えたら」~森田童子の「雨のクロール」~小室等 etc. etc. 年代モノ?のTEACカセットデッキは大したもので、あの頃の音を時空を超えて聴かせてくれます。フェイドアウトし忘れて録音されたカセットテープは、私をまた40ん年前?にタイムスリップさせてくれます。次の曲はかぐや姫の「雨に消えたほほ笑み」だとアナウンサーが紹介しています。そんな唄あったんだ……。
おっと、話もどって遠回りの鉄道の旅…イイですねぇ♪ みなみらんぼうの「ウィスキーの小瓶」という唄を心の中で歌いながら、トリスだか何だかポケット瓶をラッパ飲みしながら夜行列車の窓を眺めていたことがありました。新宿から各駅停車の夜行列車で小淵沢まで入場券で行った〇〇くんの事も思い出しました。良い時代でした♪
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