その他私のホビー
2022年3月 中村 淳 (第24代・昭和56年卒)
[記事番号:c0148]
野田ともうします。 (資料:無し
)
いや,私は野田ではないが,こういうタイトルのNHKのテレビ番組(深夜特番)を見た.これがとてもおもしろかった.それで,この番組を見て考えたことを駄文にしてみた.もうNHKプラスの見逃し配信期間は終わってしまったが,多分インターネットの他の方法でも見られるかもしれない.シーズン1・2・3とあるが,シリーズものの常として,最初のやつがインパクトがあっていちばんいい.ちなみに,原作は雑誌に掲載された漫画だが,自分は読んだことがない.
この主人公,女子大学生の野田は日常の身近な人々との会話に出てくる何気ない話題に時として強いこだわりを示し,独自の見解を唐突に披露する.日常会話として野田の話はいわゆる天然ボケであり,野田自身は大真面目だ.野田の話を聞いた人たちはいささか呆れながらも,彼女の説をそれぞれに受け止めて反応を返す.それに応える形で野田はさらに深い想像の世界に彼らを巻き込んでいく.
この番組がなぜおもしろいかというと,野田とまわりの人たちとのコミカルな会話よりも,野田というキャラクターが,誇張されてはいるものの,自分にとても似ているからだ.いわゆる,自分あるある,である.
自分も野田のようなとりとめのない想像をめぐらすことがよくある.たとえば,前々段で「女子大学生」と書いたが,自分はいつもこの言葉を使うときに考えてしまう.女子大学生とは女子大学の学生なのか,女性の大学生なのか.そもそも「女子」は「女」や「女性」とどうちがうのか.中年世代やもっと上でも(むしろそういう世代こそ),女性同士の飲み会を「女子会」というとき,どんな意図があるのだろう.a women's party, those of which are young at heartということなのだろうか.英語では「女」や「女性」をfemale,大人の女性をwoman,子供の女性をgirlという.本来の意味で「女子」はgirlだろう.一般に,womanと呼ぶべき人をgirlとはいわないし,girlと呼ぶべき人をwomanとはいわない.「女子会」の男性版を「男子会」というだろうか.自分は,恥ずかしくて使わないし,「男色会」のような怪しげな雰囲気も感じる.
「女子アナ」という言葉がある.この言葉を放送局や出版社が使うとき,お前たちがそれを使っちゃだめだろう,と思う.成人女性が個人的に自分(たち)を「女子」というのはいい.だが,正しい言葉を使うべきメディアが,womanと呼ぶべき人をgirlといってはいけないと思うのだ.日本語の語と意味の関係を,メディアが率先して変化させてはいけないと思うのだ.
「女子」という語にまつわるこんな話をしたら,妻は嫌な顔をした.自分は,若くない女性をからかってこんな話をするのではない(そういうつもりがまったくないとはいえないが).ブルーバックスに感化された中学生時代以来理系人間として生きてきて,言葉のやりとりにおける同じ語の解釈のちがいが生じないように確認しておきたいのだ.いや,言葉の正確さを求めるのは理系だけではないからこの表現はよくないが,とにかくそういうことだ.
仕事や研究ではなく,家族や友人との軽い会話では,語の定義を厳密にして場の雰囲気をこわすより,曖昧さをそのままにして和やかさを保つべきだということはわかっている.ただし日常会話にも正確さが必要な部分はある.話のどこまでは曖昧でよいが,どこからはちゃんと確認する,という境界があるはずだ.その境界をきめる共通の基準はない.かくして自分は自分のバランス感覚に基づいて,曖昧な会話と正確な会話を使い分ける.このバランス感覚が家族や身近な人たちと一致しないことが往々にしてある.野田のストーリーのおかしさもここにある.
コメント
2023年3月 中村 淳 (第24代・昭和56年卒)
[コメント番号:m0310]
勝間田君,コメントありがとう.共感してくれて,うれしいです.僕も学生時代の,ただの「理屈っぽいやつ」から少しは成長して,聞いてもらえる話ができるようになっていればいいのですが…….
理屈っぽい,野田のような人物が主人公になるストーリーが日の目を見る時代になったのを感慨深く思います.勝間田君が知っているか,わかりませんが,1970年代前半にNHKの「中学生日記」というドラマで,孤塚伸一君という個性的なガリ勉君がいて,主要な場面によく出ていました.僕は彼の理想主義的な言動が好きでした.あの時代,NHKが彼のようなキャラクターにスポットを当てていたのを意外に思ったものです.
またツーリング,行きましょう.楽しみにしています.
2023年3月 勝間田 昭彦 (第24代・昭和56年卒)
[コメント番号:m0309]
中村君、私も見ましたよ、「野田と申します」。たまたまNHK+の見逃し配信で目に触れて、第1話を見てとりこになり、毎夜、ベッドに入るとスマホで数話ずつそのまま寝てしまうまで見続けました。中村君の理系ならでは?!の考察も面白い。
また、どこかにツーリングに泊りがけで行って、宿の部屋で酒飲みながら、続きを話しましょう!
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