その他私のホビー
2024年12月 中村 淳 (第24代・昭和56年卒)
[記事番号:c0152]
12pmは昼か夜か (資料:無し
)
自分は海外からのeメールや文書を読むことがしばしばあって,時刻の呼び方のちがいから文化のちがいを実感することがある.突然だが諸兄姉に質問.12pmとはnoonのことか,midnightのことか.日本的思考ではなく,世界的思考で考えてほしい.
次の段落で正解を書くが,ちゃんと考えたい人のために,答が視界に入らないように,文末に載せるつもりだった参考文献のサイトを示そう.
文献1:午前と午後 (Wikipedia)
文献2:12-hour clock (Wikipedia)
文献3:24-hour clock (Wikipedia)
文献4:12am is noon in Japan (Long Tail World)
正解はnoon.時刻の呼び方は理屈ではなく流儀なので,合理的な説明はできないが,自分は以下のように解釈している.
米国や中部アメリカ,北アフリカ,アラビア半島諸国など*では,時刻を午前午後の12時制であらわすのが一般的で,24時制は鉄道関係や軍関係など限られた状況でしか使われない.しかしそれらの国に限らず,12時制で時刻をいう場合,おそらく日本以外のほぼすべての国で,日本でいう「0時」を使わず,「12時」という.
* この分布は,文献2の図 ‘World map showing the usage of 12 or 24-hour clock in different countries’ による.
12時制の「時」を日本では0, 1, 2, … , 11と数えるが,(日本以外の)世界では1, 2, 3, … , 12と数える.実際,どんなアナログ時計も,文字盤に表示されている数字は1から12までであり,0から11までではない.1時台から11時台までの概念は日本も世界も同じ.それに加えて日本では1時台の前に0時台を考え,世界では11時台の後に12時台を考える.日本人的には「12時台は次の区分(am or pm)に入るので,今の区分に加えるなら0時台でしょ」と考えるが,世界では「最初の数は1で,最後の数は12.その次はまた1から始まる」と考える.世界の12時制表記ではまだゼロが発見されていないのだ.これは時計の歴史を考えると納得できる.発見されている最古の時計は紀元前3,000年頃のものといわれている.一方,ゼロの概念は7世紀のインドで生まれた.時計はゼロよりずっと年上なのである.
しかし世界の人々も,12は11の1つ後だけれど,12時台は11時台の次の区分に含まれることを理解している.11がamなら12はpmで,11がpmなら12はamだ.だから12pmというのは11amの1時間後のことなのだ.つまり,12pmはnoonなのだ.同様に12amはmidnightなのだ.
彼らの12時制は時だけでなく分,秒の単位まで記すとき,一貫性がない.彼らは午後の最初の時を12pmといって0pmとはいわない.すでに書いたが,時計の「時」は最初が1で最後が12であり,この12は短針の1周期だ.しかし9時代の最初の分を9:00といって9:60とはいわない.2分台の最初の秒を2’00”といって2’60”とはいわない.つまり秒や分では最初が0で,最後が1周期 – 1(= 59)であり,「時」の数え方と分や秒の数え方はちがうのだ.もっとも彼らは9:00をあからさまにnine zeroとかnine double oとはいわずexactly nineとかnine sharpとかいう.ゼロとはなかなかいわない.しかし表記では9:00や9.00とは書く.
日本ではそもそも午後12時という言い方をしないが,日本人同士の会話でそう言われたら,午後11時の1時間後,つまりmidnightのことだと考えるのが一般的だろう.数直線ならぬ時間直線上の午後11時という位置から,11 → 12のアナロジーが働くはずだ.時刻の数学的な記述において,この論理は正しい.けれど流儀は理屈と同じとは限らない.
仮定の話で大した意味はないが,仮に日本で午後12時という言い方をするなら,午後12時0分は問題ないが,午後12時1分は問題ありだ.この解釈による午後12時1分は午後ではなく午前だからだ(これは深夜番組の放送時間を前日の番組表に含めるためにたとえば25:00–27:00と書くようなものだ).だから日本の流儀が午前や午後という時間帯をきめた後にその中の時刻を0から11で分けるのは午前/午後の属性の観点でとても合理的だといえる.
一方,世界でも24時制で「時」を数えるときには,日本と同じく0, 1, 2, … , 23と数える.この場合,世界でもゼロが発見されている.12時制では0時を使わず,24時制では0時を使う.この使い分けも一貫していないじゃないか,と日本人(というか自分)は考える.それは12時制と24時制をストレスなく使い分ける(12時制の「時」は24時制の「時」の12による剰余で,商が0なら午前,1なら午後とする)日本人の考え方で,世界の人々はそんなシステマティックな変換計算はしないのだ.彼らにはおそらく12時制と24時制はかなりちがった時間軸なのだろうと思う.
ここまで書いてきて,新たな疑問が湧いてきた.時計はゼロよりずっと年上なので,数字は1から始まる.それでは,なぜ1を真上にせず,最後の12を真上にしたのだろう.もしかして,かつては1が真上で12が現在の11の位置にある時計があったのだろうか(写真の腕時計の日付ダイアルで1が真上にあるように).そもそも,noonやmidnightをなぜ12時にして,1時にしなかったのだろう.ちょっと考えて,ネットで調べてもみたが,わからない.またじっくり考える材料ができた.
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